▲福井県三国町にて採集、生成した土を造形左官した壁
ものごころついた頃から絵を描いて育った僕は、美大を卒業したのち、2010年頃から内装美術や空間演出の仕事に関わるようになると、鳥が周辺環境をとりこみながら巣をつくる姿に共感し、自分もそんな空間を作りたいと想うようになりました。
都会の鳥はプラスチックや針金を、田舎の鳥は枝葉や藁などを鳥の巣に用います。僕も鳥と同じように古トタンや古材や民具といった廃材や、その土地の土や砂や石や植物や貝殻等の資源を採集するのですが、もう一つ採集する資源があります。それはその土地の記憶や人々の暮らし、そして夢や想いなどに纏わる物語です。
ある場所が祝福されて生まれるとき、そこには土地に刻まれてきた生活文化の様な記憶だったり、あるいは誰かの夢や想いだったりが介在すると思います。僕はそれらと対話を通して物語を受け取り、受け取った物語を空間へと翻訳する様な意識で素材に託して加工し、それらを壁や床や建具や家具や屋台などの空間に仕立てて納める。そういった事をやってきました。
例えば、
Case 1
昔習字教室だった場所を和紙工房に改装したときには、空間を全て墨汁で塗る事で和紙の繊細な白い紙肌が穏やかな光沢を携えた墨色の背景から浮き上がって見えるように願いを込めて。
Case2
空き家の増えてゆく過疎地で、初めてカフェバーを始めた友人夫妻が、地域住民に沢山関わって貰いたいという願いを汲んで、色の図鑑の本から地域住民に1人一色ずつ色を選んでもらって、僕がそれを調色した塗料を使って、建築廃材の木端にみんなで絵を描いて貰ったものをカウンターに仕立てたり。
Case3